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お寿司と感謝

以前、ロンドンの中心にある日本食レストランで半年ほどウェイトレスとしてアルバイトをしていました。板長もマネージャーも厳しく、日本の規律ある文化を忘れかけていた私は、このアルバイトを通してロンドンにいながらにしてずいぶんと勉強させてもらいました。その中でも「感謝の心を忘れない」という事は、本当に日本文化の良いところだと思う。もちろん西欧だって「常に感謝の気持ちを持ちなさい」とか聖書で教えてもらうけれども、やっぱりどこかで「自分はこれだけ頑張ったんだから当然」とか「それはあなたの仕事だから私は関係ない」とか、うっすらあるんじゃないか?だからこそどこから沸いたのか知らない自信や、人を蹴落としてのしあがる力とか、能力主義の社会で勝ち抜いてやっていけるのかもしれない。アルバイト後の毎日のまかないも「今日もまかないありがとうございます、お先にいただきます」と、板長、キッチンの料理人、マネージャーへの挨拶は絶対だった。西欧文化だったら、まず「いただきます」の英語訳がよくわからない。サンキューかなあ?でも食べる前に?そして、「雇用契約でまかない含む」とあるので、逆にまかないがないと「なんでないんだ?」ってことにだってなりかねない。イギリスに住んで2年半、未だに食事をするまえに日本語で「いただきまーす」と言わないと気がすまない。でも、これからもちゃんと「いただきます」と言おうと思う。

昨年、この16年続いた日本食レストランが、大手チェーン店にのっとられ、悲しいことに閉店を余儀なくされた。ロンドンにしてはめずらしくギラギラした夏に閉店作業。長年の営業をしのばせる、古い食器などが山のようにあり、みんな汗だくで処分する。休憩に板長から「みんなドリンク好きなの飲んでいいぞ」とお声がかかると、みんな一斉に「ありがとうございます!いただきます!」と笑顔で言う。お店の飲み物なのでまかない時でもドリンクはそうそう頂けない。でも今日でこれが最後。お店の食器類などを買い取る他の日本食レストランの人は、ゴミのような値段をたたきつけ、果てにはどさくさに紛れて同意していない他のものまで盗んでいく。(お客さんがしょうゆやビールを10年以上に渡って何度もこぼした、たくたびれた座布団まで!)。本当に感謝の心のかけらさえないようなハイエナだった。半年しか働いていないのに、こんなに愛着があるレストラン。そして、お客さんとして私の初めての「一人でふらっと立ち寄れる馴染みの店」。それがもうない。。。

閉店してから半年以上が過ぎた。。。板長とマネージャーは、ロンドン中心からちょっと離れた住宅地にある、おすし屋チェーン店の経営を立て直すべく、板長とマネージャーとして働いている。なかなか遠い場所に行く機会がなかったのだけれども、先日やっと訪ねてみた。もちろん一人で!私の唯一の「一人で立ち寄れる馴染みの場所」。そして唯一「おまかせにぎりでお願いします」と言えるレストラン。お値段はもちろん中の上だけれども、自分ご褒美の日には可能なくらい。店はチェーン店らしく、こざっぱりとしていて、昔のレストランの雰囲気とは大分違ったけれども清潔感があってこれはこれでアリだと思った。(昔のレストランは本当にいろんな人達が行きかって、板長に怒られたり、泣いたり、笑ったり、馴染みの客がいたり、変な客がいたり、様々な人間ドラマが形成した空間というような、なんともしれないパワーがあった。)

「こんにちわー」と店に入ると、アルバイトの若い女性と、マネージャーが目に入った。マネージャーは最初ちょっと私を認識するのに時間がかかったっぽかった。それから奥に板長がいた。きちんと整えた髭ができていて、今度は私が板長と認識するのに時間がかかった。お昼の開店時間すぐだったので、まだお客さんは誰もいなく、板長は「おまかせでいいよな、たくさん食べられるようにシャリは小さめに、にぎるから沢山食べろよ」と言ってくれた。マネージャーが、何飲む?と聞いてくれたので「おいしい」お茶をお願いします!と言ってみた。アルバイト当時は、「板長に合格をもらうおいしいお茶を入れられないのなら、お客様にもおいしいお茶を出せない」との考えから、開店前に板長においしいお茶を入れなければならず、私はなかなか板長からの合格が出なかった思い出がある。アメリカ人の他のアルバイトの子から「お茶葉に空気を入れるように、おいしくなりますようにと念じて入れるといいよ」とアドバイスと受けたりしたけれども、どうしてもおいしいお茶ができなかった。さて、板長おまかせの握りは、いくら、甘エビ、帆立などなどキラキラ輝くお寿司が下駄にのってきた。「いただきまーす!」しゃりが人肌くらいにあたたかくて、ネタが大きくて、おいしい!!!涙がでそうになった。この国に来て身にしみるようになった「おいしい食事の偉大なる幸せ効果」。日本にいるときよりも、おいしい食事に感謝感激する度合いが増したと思う。それから、板長はなんとウニとカニを用意してくれた!この国でこの二つを食べられるなんて夢のよう!そして思い出の「ねぎとろ」もリクエスト。ねぎとろは、アルバイト当時くせもので、注文をとるときに「手巻き」か「細まき」かを聞き、「手巻き」をお勧めし、外国人ならば海苔がぱりぱりのうちに早く食べてくださいねと注意し(にもかかわらず、海苔の面積が大きいためか外国人の多くが、海苔がベロンベロンになるまで放置し、しまいには海苔をはずして食べるという荒業も多発)、子供がいたらわさびやねぎが大丈夫か確認するなど、ねぎとろ注文にまつわるストーリーだけでも沢山ある。

お腹いっぱいになったころに、ようやくお客さんが入ってきた。外国人のお客さんのほうが多かったかな。若いカップルや家族連れや中年の夫婦。小さい店はほとんど満席になった。そろそろ帰ろうとすると、板長が「勘定のことは気にしなくていいからな。」と言ってくれた。「ありがとうございます、でも今日は自分へのご褒美の日なんです」と返答すると、「じゃあ、オレもそのご褒美の日とやらに参加させてくれないか」と、粋な答えを返され、結局ご馳走になったのでした。昔から「おやっさん、いつもの」とか「おまかせで」と言えるような馴染みの店が欲しかった私は、こういう場所を提供してくれているだけでも感謝なのに。。。。精一杯の感謝の気持ちをこめて、「ありがとうございました。」と言い、その店を後にしたのでした。

板長のお寿司を食べると、色んなことに感謝する気持ちの大切さを再確認できる気がする。今日のバスは急に路線変更して、目的地と反対の地域に到着するまで止まらなかったけれど、歩く機会を与えてくれてありがとう。昨日は地域全体でインターネット回線の問題がありネット環境がないけれど、ネットに依存しない時間を与えてくれてありがとう。今日のスターバックスは注文を3度聞きなおしたうえに間違ったものを作り、私の名前も「ハッサン」(めっちゃ男の名前)になってたけれど、最終的にまずいコーヒーを楽しむ時間を与えてくれてありがとう。。。。
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コメント

nomuhisa

懐かしく読ませてもらいました!
実質「よく通っていた」と言えるのは、修論執筆中の一か月と少しだったけど、顔と名前を覚えてくれていて「ただいま」と言えるような、そして自信を持って人に勧められる大切なお店でした。
閉店の時には、ロンドンの居場所が一つなくなってしまったようで、とても淋しかったのを思い出します。
板長とマネージャーの最強コンビが、新天地で新しい花を咲かせられるよう、遠い日本から応援しています!!

Re: nomuhisa

板長もマネージャーもnomuhisaさんのようなお客さんの笑顔が何よりも一番嬉しいんだよ、って言っていました。すでにこの新しいお店で板長のお寿司目当てのお客さんが増えて、お店の建て直しは成功のようです!

こんにちは。はじめまして。
ロンドンでの就職活動の情報を得るためにこのブログ訪れたHJと申します。

この閉店になったお店、ホルボーンにあったものですよね?
以前、旦那と何回か訪れたことがあったのに、チェーン店へと変わってしまって悲しんでいました。
板長がいらっしゃるそのお店にぜひ伺いたいものです。

Re: タイトルなし

HJさん、コメントありがとうございます。
就職活動の情報はあまり役に立たないかもですが、ご訪問ありがとうございます。

お店は、その通りHolbornにあったものです!
今は、板長はEaling Common 駅前すぐのチェーン店で板長してますので、よければお立ち寄りください。夏ごろには会員制レストランに移るそうなので、私も含めて、板長のおいしいお寿司がもう食べられなくなってしまいますので。。。
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